国際協力したい!OLのブログ

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ジェンダーと難民問題に興味あり。人生を模索中。

牛久の収容所でインド人を自殺に追いやった入管施設の実態。毎日新聞の記事より

今回は、2018年5月26日付『毎日新聞』の記事「自殺・ハンスト、騒動のある牛久入管施設を公開」という記事を取り上げます。
 

www.yomiuri.co.jp


入管が施設内部を公開することは非常に珍しいです。3、4年前にBBCの取材班が施設を取材できましたが、それぶりではないかと思います。
 
しかし、この記事で紹介されている入管の様子は実態とはかけ離れたものになっています。
支援者として品川と牛久の収容者へ面会をしてきた経験から、入管の実態を説明します。

  

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「入管に収容されている方へインタビューする際につけていた面会ノート」

 

医療問題

記事では「診療室には医師1人、看護師2人、准看護師1人が常駐。歯科診療室やカウンセリング室も設けられている。」とあります。しかし実際は医師が不在の日も多く、体調不良の収容者も多いことから医師の数が全く足りていません。診察を希望しても3週間ほど待たされるのが常だと収容者から聞きました。すぐに医者に診てもらえたという収容者にあったことは一度もありません。
加えて、待ちに待った診察の順番が回ってきてもろくに症状を聞いてもらえず、また医師は日本語以外話せないのでどんな痛みが出ているのか伝えきれないことも多いのです。
そもそも医師といっても外科や精神科などそれぞれ専門がありますが、収容者談だとおそらく内科の医師がひとりいるのみ。症状を訴えるも「わたしは専門ではないからわからない」と言われ結局ロキソニンなどの痛み止めを処方されて終わってしまうことが多いです。
風邪なら寝れば治るかもしれませんが、重病の場合でも画一的な対応をされます。わたし
子宮内膜症や、手が岩のように腫れ上がってしまった人に面会したことがあります。
運が良ければ入管外部の病院にいけることがありますが、それも申請してからだいぶ後になるそうです。
 

施設内設備 

次に施設の設備をアピールした卓球台や国際電話。
そもそもの前提として、1日6時間しか部屋の外に出ることが許されていません。その状態が1年〜2年も続きます。狭い部屋に詰め込まれて部屋の中ですら歩き回れない状況で、たまにの卓球がどれだけ運動不足を解消してくれるでしょうか。
 
また国際電話についても、かけることはできますが受けることはできません。家族がずっと家にいてかけたら必ず出てくれるなら良いですが、普通に暮らしてる皆さんも仕事や学校で電話に気づけないことも多いですよね。何もしてなくてもたまたま携帯がそばになく着信に気付かなかったということはザラにあります。
 
忘れられないエピソードがあります。
わたしは以前、クルドの若者に頻繁に面会しており普段は携帯番号を教えないのですがその人はほかに支援者もいなく本当に困っていたので連絡先を教えていました。
ある日、授業終わりに携帯を見ると知らない番号からの電話が5件。立て続けに入っていました。
何事だろうと思って留守電を聞いてみると、クルド人の彼からでした。
 
「仮放免申請が却下された。もうここから一生出られない。死にたい…」
 
すぐに折り返ししましたが入管の電話は受電ができません。つながることないまま、面会に行こうと思いましたが面会時間の15時を過ぎているので会うこともできませんでした。
結局彼は品川の収容所から長期収容者が入る茨城県牛久の収容所に次の日の朝移送され、会うことができなくなりました。
 

食事

最後に食事。記事ではアレルギーや宗教に配慮しているとし、参考に食事の写真が掲載されています。
 
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入管の食事例。毎日新聞より

 断言するとこれは嘘です。まず個々の事情については配慮されることはありません。イスラム教の方に平然と豚肉を提供します。

また食事は揚げ物が中心で、それも衣ばかりで中身がほんの少ししかないようなものです。さらに揚げすぎているため固くて食べられたものではありません。
 
ただ、あくまでもこれは収容者から口頭で聞いたのみですので、少し話を盛っている可能性もあります。
ただ食事のひどさは収容者全員が言うことで、あまりにもひどいため食べない方がマシ、という状態になるそうです。
 

 まとめ

いかがでしたでしょうか?
毎日新聞の記事が、あまりにも表面だけをなぞり理不尽な入管の実態を隠すものになっているので、収容者のリアルをお伝えしました。
 
ここまで書いて思うのは、かといってわたしは実際に入管内での生活を体験したことはなく、あくまでも収容者から聞いただけの話に、どれだけ信憑性があるかということです。
日本語を流暢に話す方も少ないので、そもそも単語の選択などで齟齬が生まれているかもしれないことや、収容者の方は自分が被害者であることをアピールしようと大げさに話している可能性も否定できません。
 
しかしだからこそ入管の、収容者の管理を第三者機関を介さず全て入管が行っているという態勢は看過できないことだというのは、客観的に理解いただけるはずだと思っています。
収容施設というと刑務所がパッと思い浮かぶと思います。刑務所でさえも、国会議員や医師、弁護士を含む「刑事施設視察委員会」という第3者機関が存在します。適切に運営されているか外部の人間によって監視する制度が整っているのです。
収容されている人が外国人だからといって、そこに差があってはいけないはずです。
しかし、非常に悔しいことですが既存の支援者による抗議では入管制度は変わりませんでした。
 
この記事を機に、皆様に入管の存在について少しでも疑問を持っていただけたら幸いです。